【東方新報】新型コロナウイルスの感染拡大で、中国政府が1月末から海外への団体旅行を禁じた影響で、日本各地の温泉街の旅館・ホテルが閉業を余儀なくされている。

中国人観光客に人気だった静岡県伊豆の国市の旅館「華の湯」は、3月末で閉館に追い込まれた。昨年4月にリニューアルして以来、中国の観光会社と契約し、中国人団体客を連日受け入れていた。おかみの松島典子（Noriko Matsushima）さんは「お客さまの99％が中国の方」と話す。1月末から4月末まで約2700人、約1500万円分の予約がキャンセルになり、従業員6人が退職。この先、新型ウイルスが収束するめども立たず、閉館を決めた。

静岡県観光協会によると、県内のホテル・旅館で1～4月分のキャンセルは2月末時点で約49万人。かつて日本の温泉街の代名詞だった熱海市でも、中国人観光客に特化していたホテルが休業を決定。支配人は「2月だけで2600人の予約がすべてキャンセルされた。休む以外に選択肢がなかった」と嘆く。

愛知県蒲郡市の西浦温泉にある1956年創業の老舗旅館「冨士見荘」も2月中旬に廃業した。数年前から中国人ツアーの受け入れを強化し、40室ある客室の半分は常に中国人観光客向けに確保していた。経営者は「春節（旧正月、Lunar New Year）で最も収益を見込めたシーズンと重なってしまった。せめて時期がずれていたら」と肩を落とす。

静岡県や愛知県は、中国人観光客に人気が高い「ゴールデンルート」と呼ばれる東京―大阪間をバスで移動する途中の宿泊地として定着している。「浴衣姿で天然の温泉と日本料理を楽しむ」「優しいおかみが母親のように接客してくれる」という体験は、日本の伝統と「おもてなし」の文化を味わえる人気の観光スタイルだ。それだけに中国人観光客が一斉に途絶えたことで、中国人観光客に依存していた旅館・ホテルは資金繰りが一気に悪化し、閉業に追い込まれている。

中国のネット上では新型ウイルスが最も深刻な時期、「日本は多くの支援物資を贈ってくれている。海外旅行が再開されれば、『恩返し』で早く日本に旅行したい」という書き込みも多かった。それだけに老舗旅館の廃業というニュースを残念がる声も目立つ。

その一方、中国のニュースサイトでは「なぜ日本の老舗旅館はわずか1～2か月の苦境でつぶれるのか？」という話題も出ている。「日本人観光客は旅館より近代的なホテルを選んだり、少しでも安い旅館を選んだりするため、老舗旅館は常に激しい競争にさらされている。このため多くの中国人観光客を受け入れて薄利多売で経営を維持していた。家族経営のため資金に余裕もなく、短期間でも客足が途絶えると立ちいかなくなる」という分析もされている。

中国人観光客に人気の北海道でも、札幌市内の観光バス会社が運転手20人を全員解雇するなど、深刻な状況となっている。

新型ウイルスは「不況のウイルス」も拡散させている。

4/3(金) 23:57配信
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